こんにちは、旅ガラスです。
南半球で最も冷涼なワイン産地、ニュージーランド(以下NZで略が出ます)。まだまだ知名度は低いものの、日本でNZワインを見かけることも増えてきました。
ニュージーランドってラグビーのイメージです。ワインも美味しいんですか?
実は特定の地域のワインは世界中にファンがいる隠れ名産地なんです!白ワインや渋みの少ない赤ワインが多く、ワイン初心者がスタートするにはもってこいの産地です。
ワイン飲めない人が良く言う、渋みや苦みが比較的少なく、フルーティーなワインが多いんです。
元NZのワイナリースタッフだった旅ガラスが、ニュージーランドワインの魅力とオススメを紹介いたします。
3分でわかる!ニュージーランドワインの歴史
NZワインが国際市場に出まわるようになったのはかなり最近、1980年代後半になります。マールボロ地方のソーヴィニヨン・ブラン-Sauvignon Blanc-爆発的な大成功を収めたからです。
ちなみにNZワインの生産量のおよそ7-8割が輸出されてます。それまでは国内重要で細々とやっていたみたいです。
ザックリした年表は以下の通り
- 1819年にイギリス人によって葡萄の樹が植えられる。
- 20世紀前半はクロアチア移民がワイン生産を切り拓いていく。
第二次大戦後は酒精強化ワインが流行る - 1970年代、冷涼な南島でもワイン造りが始まっていく。
- 1980年代、マールボロ地方のワインが世界的に流行し国内生産量一位に成長
- 2017年、ワイン法の制定
1980年代がNZワインの歴史上のターニングポイント。NZワインの国際知名度が上がりました。マールボロ地方の大躍進もありますが、それに続いて冷涼な南島のワイン産地が誕生、次々と評価されていったのも大事なポイントです。
複数の日本人醸造家がワイン造りをしている
実は多くの日本人が移住してワイン造りをしてる国でもあります。色々な理由があるかと思いますが、NZワインに魅せられた人が多いと思います。
もちろん移住の容易さ、葡萄畑を持つハードルの低さなどが加味されます。特に英語圏ですし。
旅ガラスが訪問したのはコヤマ・ワインズ-Koyama Wines-のみ。前日に急遽寄れそうなのでメール送ったら心良く迎えて頂きました。
そのとき超高級ホテルで働いていたので、3-4本購入して後日同僚たち試飲。かなり気に入ってもらいました。(残念ながら地元ワインを推進していたので取引とはなりませんでした)
海外で頑張ってる日本人というのは応援したくなりますし、1人のワイン好きとして海外で活躍する醸造家の皆さんには頑張ってもらいたいです。
葡萄の主要品種を知ろう
NZワインの主要品種は主に二つ
- ソーヴィニヨン・ブラン-Sauvignon Blanc-
NZワイン生産量の75%、国のシンボルワインです。基本的には若いうちに飲まれる品種のワインですが、差別化を図るべく樽を使ったものや熟成させたものも登場してきている。 - ピノ・ノワール-Pinot Noir-
赤ワインの品種の中では渋みが少なく飲みやすい口当たりが特徴。NZ産の場合はややアルコールが高めになりやすい。
ユニークなソーヴィニヨンブランに魅かれて大手ワイン会社がマールボロ地方に進出、ワイン造りを始めました。
それと同様に、ピノ・ノワールを作りたい生産者が次々移住してきました(日本人生産者のほとんどがピノノワール造ってます)
なぜならピノノワールは生産が非常に難しい品種で、ヨーロッパの気候や土壌に恵まれている場所はすでに歴史あるワイナリーが独占、若手の入る余地がありません。
例えばフランスのブルゴーニョ地方
ワインを作れば成功を約束されたような絶大な知名度を誇りますが、ワイン畑が売りに出ることも少ないでしょうし非常に高額です。
そういう意味でNZ移住およびワイン畑を切り拓くのはなかなか魅力的です。2021年現在ではビザや土地の売買が外国人には厳しくなってるので難しいですが、当時は非常に夢のある選択肢だったと思います。
そういった背景もあって上記2品種はNZワインの代表品種としてになりました。
ただし、この二つは寒い環境で生育するのに向いているので、温暖な産地のワインは別途説明します。
ワインの産地を知ろう!
2020年現在、ワイン法(Geographical Indication)で制定された10地域。
- ノースランド-Northland-
- オークランド-Auckland-
ーワイヘケ・アイランド-Waiheke Island- - ギズボーン-Gisborne-
- ホークス・ベイ-Hawke`s Bay
- ワイララパ-Wairarapa-
ーマーティンボロー-Martinborough- - マールボロ-Marlborough-
- ネルソン-Nelson-
- カンタベリー-Canterbury-
- ワイタキ・バレー/ノース・オタゴ-Waitaki Valley / North Otago-
- セントラル・オタゴ-Central Otago-
今回は旅ガラスが訪れた事のある生産地(太字&アンダーライン)を中心に紹介していきます。
セントラル・オタゴ-Central Otago-
実は旅ガラスが働いていたのもこの地域。なので少し詳しく解説します。
この地域は観光地として栄えており、夏は湖上アクティビティと登山、冬はスキーで栄える観光地になります。
ワイン産地の特徴は以下の通り
- 世界最南端地域、南緯45°で気温差の激しい(南米にも南緯45°の産地あり)
- NZ国内では唯一の内陸産地、雨量が少なく非常に乾いてる
- 土壌は水はけの良く硬いシスト(無機物が多く有機物が少ない土壌)
- 主要品種はピノ・ノワール-Pinot Noir-。セントラル・オタゴの8割占めます。
・気温差が激しい
⇒フレッシュな酸味を残したまま葡萄を完熟する。完熟させると、フルーティーでアルコールが高いワインになりやすいです。
・雨量が少ない
⇒葡萄の病気のリスクが減る、また収穫前に雨が降ると葡萄が水膨れして味が薄くなるといった問題が出るのですが、そういうリスクが減らせます。
・無機物が多く有機物が少ない(痩せた土壌)
⇒一般的に痩せた土壌はワイン造りに良いとされてます。詳しくは長くなるので省きますが、ワインの銘醸地には大抵この条件がそろってます。さらに無機物を多く含むとなおよし。
セントラル・オタゴのピノノワールの特徴は
- アルコールは高めで力強い
- レッドベリーとタイムの香り
特にタイムの香りはこの産地独特のもの。
ゴツゴツした谷の地形にはタイムが至る所に茂っていて、その影響がワインにも表れるのではと言われています。言われて気にするようにしてみましたが、セントラル・オタゴのピノノワールの1/3くらいはタイムっぽい香りがします。
なのでセントラル・オタゴのピノノワールはステーキと合うものが多いです。
肉の旨味に負けない力強さ、ベリー系の爽やかな酸味、そしてタイム(肉や魚の匂い消しに使われるスパイスで相性がいい)
そんなセントラル・オタゴワイン、以下日本で手に入る&旅ガラスが印象に残ってるワイナリーを紹介します。
フェルトン・ロード-Felton Road-
「シンデレラワイン」の代表格、セントラル・オタゴで最も成功してるワインです。現地では1人2本までしか買えない稀少ぶり。ウイスキーなら山崎、焼酎なら森伊蔵、日本酒なら十四代みたいな売れっ子ワインです。
旅ガラスが飲んだのはピノノワール/カルヴァート畑の2017年。
味は王道、飲みやすいレッドベリーとバニラ、天草、長い余韻とほのかなハーブ。力強さと心地よさが共存したようなワインです。
日本で幾つかの畑の物は買えるみたいですが、旅ガラスの飲んだワイン畑&ヴィンテージがあったのでリンク載せときます。きっと飲み頃になってる頃でしょう。
ギブストン・バレー・ワイナリー-Gibston Valley Winery-
ここは旅ガラスの古巣、まさか日本で買えると思ってなかったのでびっくりしました。少なくとも、旅ガラスが帰国した頃は見なかったです。
このワイナリーはワインの種類が豊富、おそらくセントラル・オタゴの中でも種類/質/値段ともにトップクラスだと思います。
日本で買えるのはピノノワールの「グレンリー」という単一畑ワイン。当時僕が働いてたときは、ワイナリーで売り切れ、販売してなかったワインです。しかもリピーターからちょこちょこ尋ねられる人気ワインでした。
特別に飲ませてもらったときには納得。フルーティーで滑らか、ほんのスミレの華やかさが残るワインでした(vintageは2016)。日本人好みだと思います。
カンタベリー-Canterbury-
クライストチャーチから北に車で一時間ほど走ったエリア。このエリアの土壌は道路を挟んで大きく2種類に分かれています。そのうち一つはブルゴーニョ地方と同じ石灰岩を含む土壌で、味もややそちらに近いです。
主要品種はピノ・ノワール-Pinot Noir-とシャルドネ-Chardonnay-、そしてリースリング-Riesling-
先に紹介したセントラル・オタゴに比べて、こちらはアルコールがやや控えめ、よりエレガントな印象が強いです。また、特にリースリングは貴腐菌がつくので甘口以外でも独特な香りがすることが多いです。
以下日本で手に入る&旅ガラスが印象に残ってるワイナリーはこちら
コヤマ・ワインズ-Koyama Wines-
日本人の小山さんがオーナーのワイナリー。実はこの方はMountfoldというワイナリーで修業後独立、そしてMountfoldが売りに出たので買収。二つブランド持ってます。今は完全に統一されたにか、日本に入ってきてるのはKoyama Winesのブランドだけみたいです。
個人的にはMountfold/Chardonnay/Liaisonが好きだったんですが、日本にはシャルドネが入ってないみたいです。(もしくは全部リースリングに変更したか)
日本に入ってるのはピノノワールとリースリング。2019年当時飲んだピノノワールは2016、香りは控えめ、まだ硬く気難しい印象でした。そのあとに2014ヴィンテージ飲ませてもらったらとても香りが立っていて華やか、そして口のなかで溶けていくような口当たりでした。飲み頃が難しいですが、ポテンシャルは高いワインだと思います。
ブラック・エステート-Black Estate-
葡萄畑を眼下に見下ろすように建てられたセラードア、非常に眺望のよいレストランが併設されています。(写真撮ってなかったので代わりに黒板)
ここのワイナリーはかなり辛口の白が多いので好み分かれると思います。旅ガラスはけっこう好きで、特にリースリングは凄く甘い香りがするのに口当たりがドライで面白かったです。
通販サイト見るまで知らなかったですが、評価高いワイナリーみたいです。NZシャルドネtop10に入る実力派だとか。旅ガラスが気に入ったのはリースリングとピノノアールなので関係ないんですが(笑)
旅ガラスが飲んだのは2017年なのでフレッシュさの残った味わいでしたが、もし写真通り2014年来るならトロッとした口当たりが楽しめそうな美味しいリースリングに仕上がってるかと思います。
マールボロ-Marlborough-
タバコの銘柄?
旅ガラスの最初の感想で色々訪ねてみましたが、全然関係ないみたいです。
ニュージーランドワインが世界的に有名になったのはこの産地からになります。なぜならこの地で作られるソーヴィニヨン・ブラン-Sauvignon Blanc-が非常にユニークだからです。ほかの産地にない強烈な爽快感は世界のワイン好きを虜にしました。
旅ガラスのイメージは「芝生を刈った後の香り×パッションフルーツ」です。これに慣れると、他の白ワインが物足りなくなるのでやや注意が必要です(笑)
以下日本で手に入る&旅ガラスが印象に残ってるワイナリーはこちら
ヴィラ・マリア-Villa Maria-
超大手、けっこう色々な所に輸出してる大きいワイナリーです。
旅ガラスもオーストラリアでは良く飲んでました。写真はセラー限定などの少しお高めの黒ラベルワインなんですが、愛飲してたのは白ラベルの安いやつ。ときどき半額近くまで値段が下がるので、その時は箱買いしてましたね(笑)
マールボロワインの中では味が尖り過ぎず、バランスが良くて食事にも合わせやすいんです。マールボロのソーヴィニヨンブランは20種類以上試しましたが、値段と味のトータルで見た時のお気に入りはここになります。
特徴はパッションフルーツとオレンジを足して2で割ったような香り、そして爽やかな芝生の香り、瑞々しいアッサリした口当たり。キンキンにしてちょっとピリ辛な料理た合わせるのが旅ガラスのお気に入りです。
セント・クレア-Saint Clair-
NZ滞在中、シャルドネばっかり飲んでた時期に出会ったお気に入りワイン。なぜならコスパが良く、ナッツ強めの甘くクリーミーな香りが魅力的。
カリフォルニアのスタイルに似ています。そして現地価格だと1000-2000円くらいとお手頃(笑)
シャルドネも幾つか作ってるんですが、特に気に入ったのはPionear Block。濃厚なナッツと熟したピーチやパイナップルの香り、でも口当たりは意外に優しくてニュージーランドらしさも出ています。
ワイナリーに訪問した印象はカジュアルレストランの印象でしたが、販売ページ見るとなかなかすごいワイナリーみたいです。高いけどw
カリフォルニアのシャルドネが好きな人には是非トライして欲しいワインです。
ホークス・ベイ-Hawkes Bay-
北島の有名な産地、ホークス・ベイ-Hawkes Bay-。
ここの土壌は小石が混じる沖積土壌、葡萄畑が温かい状態で保たれます。なぜなら石の保温能力が高いため、夜になっても放射熱で気温が下がりにくいからです。葡萄の熟すのが遅い品種には良い環境になります。
フランスのボルドーと似てるだけあって、人気品種もボルドー品種(カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー)+シラー-Syrah-
ここでは別格のワイナリーが一軒あったのでご紹介します。
クラギーレンジ-Craggy Range-
建物デカい!そしてなんと一番高い試飲料金が$50(4000円)かかるワイナリー(笑)
一番安いのですませる予定でしたが、雑談してたら特別にタダにしてもらいました。たまたま素敵な責任者さんがいてありがたい限りです。
特に印象に残ってるのがボルドーブレンドとシラー。
か、硬い!でも滑らかな口当たりもあって、まだまだ飲むのが早すぎると感じる重たさを感じるワインでした。本場に負けない力強さとタンニンの量です。
シラーは2012年でOK、ボルドーブレンドは2016年は全然美味しくない。3年で飲むもんじゃありません。シラーはデキャンタに入れて飲めばかなり美味しく飲めると思います。
一番高い試飲にトライしないと出てこないと思いますが、これを飲まないとホークス・ベイ来た意味があまりない、と言えるくらいポテンシャルの高さを感じました。なかなか躊躇する値段ですが、赤ワインが好きなら思い切って投資する価値のあるワインです。
ネルソン-Nelson-
エイベル・タスマン国立公園にハイキングに行ったときに幾つかワイナリー回りました。人気品種はソーヴィニヨンブランとピノグリ、ピノノワール(by ソムリエ教本2020)
個人的にはシャルドネとピノグリはそこそこ美味しかった覚えがあります。以下記憶に残っているワイナリーをピックアップ
ノイドルフ-Neudorf-
スペル見る限りドイツ系、同僚のイタリア人ソムリエのオススメで訪ねました。
確かに美味しい、でもなんというか値段不相応な感じがして旅ガラスにはイマイチ刺さらなかったワイナリーです。きっと今飲んだら評価がガラリと変わると思うんですが、思い出の中では中庸の域を出ないワインでした。
ただし、ピノグリを除く。とってもフルーティーで切れ味のある苦み。知名度高いだけ入って日本にも入ってきてます。お値段なかなか高いのが玉にキズw
リワカ・リバー・エステート-Riwaka River Estate-
ネルソンで一番印象に残ってるワイナリー。おっちゃんが趣味でやってる小規模ワイナリー。なんですがシャルドネが非常に美味しくて思わず購入しちゃいました。
先に紹介したマールボロと比べてオークの影響は軽く乳製品が強め。レモンピーチパイのような優しい味わいと切味のある適度なミネラル感、シャブリに近いとても魅力的なワインでした。
旅ガラスがハイキングに持参、ワイン準備したら天気悪くなって、雨降ると嫌なので飲みながら下山したのでよく覚えてます(すれ違う人との会話が弾みましたw)
地産地消、日本に入ってくることはまずないと思いますが、もし現地行く機会がある人は是非トライしてみてください。
マーティンボロー-Martinborough-
北島でピノノワールと言えばこの産地、超高級なワインが多いです。実は友人の家がこの付近にあったので、2週間ほど葡萄畑で働きながら滞在しました。ただし、残念ながら冬だったのでワイナリー訪問はほとんどできず。
予約不要のワイナリーに3-4箇所寄ったんですが、ぱっとせず。有名ワイナリーは予約必須でした。オススメできる場所が出てこないのでワイナリー紹介は割愛します。
その他
(サブ)ワイヘケ・アイランド-Waiheke Island-
ボルドーブランドで高級ワインを作ってます。ニュージーランドではかなり温暖
ギズボーン-Gisborne-
人気品種はシャルドネ-Chardonnay-。一番日付変更線に近いワイン産地です。
まとめ:ニュージーランドは魅力的なワインが一杯!
決して知名度は高くないですが、上質でお手頃価格のワインを沢山作ってるのがニュージーランドワインです。
この機会にニュージーランドワインを色々試してみて、あなたのお気に入りワインを探しちゃいましょう。きっと美味しいワインが見つかると思います。
宅飲みワイン研究所長のニュージーランドワインの選び方
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